CASE02
英会話など、もっと生徒の能力を引き出せる授業のありかたを
実践されている東京都立柏葉中学校様の事例をご紹介します。
聴き取りにくい
装着するまで、生徒は精神的な不安がある。
Q. comuoon導入のきっかけは?
私が初めてcomuoonを見たのは、2013年の春頃。テレビ取材の一貫として、本校の難聴学級でcomuoonを体験できる機会があったんですね。早速どのくらい聴こえるのか、英会話の授業で試してみたところ、生徒たちからは「よく聴こえる!」と絶賛の嵐。難聴者が聴き取りづらいと言われるk,s,tの発音までも聴き取れたことには、30年以上も難聴学級に携わっている私も正直驚きました。いままでの聴覚障害児教育は、口話法や手話など、聴覚情報を視覚情報に置き換えていました。一方、comuoonは聴覚情報をそのまま鮮明に伝えることができるので、もっと生徒の能力を引き出せると確信しましたね。その後、ユニバーサル・サウンドデザインさまからcomuoonを寄贈いただき、毎日の授業で活用させていただいています。
Q. 実際に使ってみて、どのような変化がありましたか?
先に挙げた通り、comuoonという存在のおかげで、生徒たちがより深く英会話を学べるようになりました。つまり、彼らにとってコミュニケーションの場が増えたのです。そのおかげで、英会話の授業に対する生徒たちの苦手意識が薄まり、楽しみながら積極的に学ぶようになりました。また、プールの授業は耳が濡れてしまうので、耳の中が乾くまで補聴器を使うことができないという問題がありました。中等度程度以上の生徒は補聴器を頼りに生活をしているわけですから、それが使えないと利便性はもちろん精神的に支障が出てしまいます。耳が乾くまでは我慢をすればいいと感じるかもしれませんが、生徒たちにとっては補聴器を使えない時間が不安でなりません。その点、comuoonはスピーカータイプなので、プールの授業後も補聴器なしで授業を受けることができます。これはいままではあり得なかった画期的なことなんです。
Q. 現在の聴覚障害児教育について教えてください。
聴覚障害児教育は、様々な課題を抱えています。例えば、教員の問題もそのひとつ。難聴学級の教員になるには、特に基準や研修が設けられているわけではありません。通常学級を担当していた方や、他の障害学級を担当していた方が難聴学級の教員になることもしばしばです。そうなると、難聴学級ごとの教育水準に差が出てしまい、「ある学校の難聴学級には生徒が集まる」「ある学校の難聴学級には生徒が集まらない」ということが起きてしまいます。また、高校、大学、社会で生きる難聴者に対しての受け入れ態勢をもっともっと整えていかなければいけません。いまのところ、日本の高校以上で難聴者の受け入れ態勢が整っているところは、残念ながらろう学校のみ。一般的な高校や大学では、難聴者は普通の学生と同じように扱われてしまい、特別なサポート態勢もありません。本校は、通常学級の生徒による手話部があるので学校として難聴生徒に対して理解や支援をしていこうという考えがしっかりと根付いており、難聴学級の生徒が孤独にならないようなセーフティネットになっています。しかし、日本の現状はまだまだそういった意識が根付いていませんね。
Q. 山口教諭の今後の目標は?
聴覚障害児教育をもっと日本中に浸透させることですね。現在、難聴を抱えた生徒は、ろう学校に入るか、一般の学校に入るかの二択です。ろう学校に行けば本人にとって居心地は良いと思いますが、そこを卒業していきなり社会で生きていくのは現実的に難しい。だからこそ、難聴と上手に付き合いながら社会に適応できる人間に育てていかなくてはいけません。例えば、スウェーデンでは複数の高校に難聴学級がありますが、日本では京都府に1校のみ。日本は先進国の中で、聴こえのユニバーサル化がかなり遅れているんですね。その一方で、日本で補聴器がここまで普及したのは、行政機関から認可を受けて補助金が出たという経緯があります。comuoonも同じように行政機関に認められれば、もっともっと普及が進み、ひいては日本の聴こえのユニバーサル化に寄与すると思います。私もcomuoonを通して、より多くの生徒に学ぶ楽しさや社会性を身につけてもらえるように支援したいと思います。
※取材内容は2015年3月時点のものです。