CASE08
聴取ばかりでなく発話の練習にも用いるなど工夫された使われかたをご紹介します。
(よそ見をした時点でコミュニケーションが終了してしまう)。
言葉のニュアンスを伝えることができない。
Q. comuoonをどのように使われていますか?
本校にはcomuoonが2台ありまして、授業の科目に関係なく対面形式で利用することが多いです。高等部・中学部・小学部・幼稚部の4つの部があるのですが、主に高等部、中学部、小学部でローテーションをしながら各クラスで使っています。ローテーションのタイミングによってはcomuoonを使えない授業もあるので、そのときはがっかりする生徒もいます。それくらいcomuoonは彼らに重宝されているということなんですね。comuoonを最初に導入したのは、昨年の3月頃。中石社長が「きこえのあしながさん」プロジェクトの一環として、本校に1台寄贈してくださいました。その後、佐賀県から特別支援教育の支援費というかたちで予算が下りたので、それを利用させていただき、もう1台購入した次第です。
Q. comuoonを導入してどのような変化が?
以前よりも、生徒たちが授業に対して積極的になりました。学ぶことの楽しさを実感しているのだと思います。言うまでもなく、comuoonは「音声を聴こえやすくする」という点が魅力のひとつですが、実は発話の練習にも使うことができます。難聴の生徒は、話すことがあまり上手ではありません。それは、自分自身の声が聴き取りにくいために、うまく発話することができないからなんですね。そこで本校では、comuoonのマイクとスピーカーの両方を生徒に向け、実際に自分の声を聴かせるようにしています。自分の声がどのように聴こえるのか。これが大切なんです。さらにcomuoonは、ノートをとりながらでも私たち教員の声を聴くことができるのも魅力。手話ですと、よそ見をした時点でコミュニケーションが終了してしまいますから。本校の生徒は、手話を習得している子たちが多いのですが、一般校から本校へ移ってきたという生徒は手話があまり得意ではありません。そういった生徒たちに対して、手話だけで勉強を教えるのには限界があります。もちろん手話は今後も有効な手段であることに間違いはないのですが、言葉の「ニュアンス」まではどうしても伝えにくい。そういった意味でも、comuoonはとても大切なコミュニケーションツールなんですね。
Q. 日本を取り巻く聴こえの問題についてどう思いますか?
聴覚障害は目で見えるものではないので、一般的にはなかなか理解されにくいという現状があります。しかし人は普段、耳から多くの情報をキャッチしています。例えば、テレビを点けっぱなしで画面を観ていなくても、音声情報だけは自然と耳に入ってきますよね。難聴者の場合はそれがシャットアウトされているので、自分から意識的に情報をキャッチしようとしても、そこにはどうしても限界がある。だからこそ、私たち健聴者が難聴の方々と同じ立場に立って努力をしていくということが大切なんですね。その橋渡しをしてくれる存在がcomuoonなのだと思います。先程もお話したように、難聴者は手話を習得されている方が多いですが、健聴者はどうでしょうか。手話はできないにしろ、聴覚障害についての最低限の知識を持っていてほしいです。もっと言えば、難聴者に頼られることがあれば、何かしらの方法でコミュニケーションをとれる準備ができているといいですね。それは、手話でも、筆談でも、comuoonでも、人それぞれのやり方でいいと思うんです。幸い、comuoonという画期的な製品が登場したおかげで、今後は健聴者と難聴者の距離がもっともっと縮まっていくのではないでしょうか。
Q. 今後の目標を教えてください。
私が本校に赴任してきたのは今年の春。ろう学校という環境で教壇に立つのは初めての経験だったんですね。恥ずかしながら、これほど難聴の生徒たちとコミュニケーションをとることが難しいなんて、まったく知りませんでした。難聴を抱えながら一生懸命頑張る生徒たちの姿を見ていると、「この子たちとコミュニケーションをとりたい」「もっと役に立ちたい」と強く思います。私はいま、手話を勉強している真っ最中。生徒たちとより深いコミュニケーションができるよう、ひたすら邁進してまいります。
※取材内容は2015年9月時点のものです。